高濃度乳房

乳腺濃度とは

乳房は乳腺組織、脂肪組織、皮膚、乳頭・乳輪、血管などにより構成されます。
マンモグラフィではX線が通過しにくい乳腺組織は白く、通りやすい脂肪組織は黒く写ります。
そして乳房に占める乳腺組織の割合のことをマンモグラフィでは「乳腺濃度」と言います。
白い部分(乳腺組織の部分)が多いと、乳腺濃度が高いと表現し、反対に黒い部分(脂肪組織の部分)が多いと、乳腺濃度が低いと表現します。
乳腺密度はあくまでマンモグラフィで使用される言葉であり、触診や乳房超音波検査では使用されません。

乳房の構成とマンモグラフィ

マンモグラフィでは、乳腺濃度を「乳房の構成」として評価し、4つに分類します。

  1. 脂肪性:乳房内はほぼ脂肪組織であるため、マンモグラフィでは乳房全体がほぼ黒く写ります。
  2. 乳腺散在:脂肪組織の中に乳腺組織が散在しています。マンモグラフィでは、黒い部分と白い部分が混じっていますが、黒い部分が多く写ります。
  3. 不均一高濃度:乳腺組織の中に脂肪組織が混在しています。マンモグラフィでは、黒い部分と白い部分が混じっていますが、白い部分が多く写ります。
  4. 高濃度:乳房内はほぼ乳腺組織であるため、マンモグラフィでは乳房全体がほぼ白く写ります。

高濃度乳房ではしこりを見つけにくい

マンモグラフィでは乳腺組織は白く写りますが、しこりなどの病気も同じように白く写ります。
そのため乳房の構成が不均一高濃度や高濃度の人は、乳腺散在や脂肪性の人に比べ、しこりなどの病変が乳腺に隠れてしまい、乳がんなどが見つけにくくなる傾向にあります。
「乳房の構成」はしこりの見つけやすさの指標として用いられ、しこりが正常乳腺に隠されてしまう危険性の程度を示しています。
最近では不均一高濃度と高濃度を合わせて高濃度乳房(デンスブレスト)と分類し、注意を喚起するようになりました。

高濃度乳房は病気でない

乳房の構成は、年齢や人種によって差があるだけでなく、ホルモン補充療法、妊娠・授乳でも変化します。
高濃度乳房は、欧米人に比べて日本人が、また高齢者に比べて若い人に相対的に多いことが知られています。

日本人の約40%が高濃度乳房と考えられています。
高濃度乳房はその人の乳房の個性(体質)であり、病気ではありません。
そのため、検診で高濃度乳房と言われても、要精密検査にはなりません。
当然、保険診療の対象ではなく、乳房超音波検査などの追加検査を行う場合、任意型検診(自費検診)になります。

高濃度乳房の追加検査

乳がん検診では、マンモグラフィが唯一乳がん死亡率減少効果があると科学的に認められています。
しかしマンモグラフィだけではすべての乳がんを発見することはできません。
特に高濃度乳房の方はマンモグラフィでのがん発見率が低い傾向にあります。
高濃度乳房の対応として、乳房超音波検査、乳房トモシンセシス(3Dマンモグラフィ)、乳房MRIなどがあります。
これらの検査を追加することでマンモグラフィのみの検査より、がん発見率が上がる可能性があります。
ただし、結果としてがんではないものに対して精密検査となってしまう頻度(偽陽性:ぎようせい)が上がるという不利益もあります。

追加検査を選ぶことによるメリットとデメリットを考えて、自分自身にとってバランスの良い検診方法を選ぶことが重要です。

動画による解説

有志の乳腺科医の集まりが乳腺・乳がんに関する情報を発信しているYouTubeチャンネル「BC Tube編集部」がに高濃度乳房(デンスブレスト)について解説している動画になります。
上手くまとめられていましたので、興味のある方はこちらもご参考ください。

乳がん大事典【BC Tube編集部】(外部サイト)